【高額賭博行為】パチンコに漂う終焉感「庶民の娯楽としての役割はとっくに終わってる」

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この記事の要点解説

１．駅前に賭場がある国で、僕たちは何を見てきたか
三月下旬、上野の空はまだ冬の名残を引きずりながらも、かすかに春の気配を滲ませていた。
その朝、パチンコ太郎は不忍池のほとりに体育座りで座り込んでいた。スーツの裾は湿った地面に触れ、風がネクタイを踊らせていた。陽光は鈍く、池の水面には冷たい風が小さな波紋を走らせる。

公園を歩く人々は、誰も彼の存在に気づかない。あるいは、気づいても関わりたくないのかもしれない。彼はただ静かに、石を拾っては池へと放り込んでいた。
ぱしゃん、と波を立てるたび、過去の景色が脳裏に浮かぶ。

昭和の時代。連発式が登場し、ホールは希望の箱だった。労働者たちは汗と油まみれの手で玉を弾き、手に入れた景品は洗剤や缶詰、そして笑顔だった。
あれから七十年、駅前にそびえる派手なネオンは、希望ではなく依存の墓標に変わった。

「365日、賭場が開いている。ここは本当に日本か？」
自問する声は低く、冷たい空気に溶けていく。
春が近づくこの季節に、なぜこんなにも心は寒いのか。

太郎は見てきた。駅を降りた瞬間に目に飛び込んでくる巨大なパチンコ屋の看板。
「PIA」「エスパス」「マルハン」――それらはもはや文化でも建築でもない、欲望の砦だった。
鳴り響く電子音。遠くからでも聞こえる玉のぶつかる乾いた音。
あの音が、人の人生を壊すことを、何度も目にしてきた。

「一度でいい、誰かが止めていれば――」
そう思った時期もあった。だが、警察は目を伏せ、政治は金に屈した。
人々はパチンコを“庶民の娯楽”と呼び続けた。

彼の胸の中で、何かが焼け焦げる音がした。
咄嗟に拳を握りしめた。
そして、不忍池に最後の石を投げた。

パチンコ太郎はゆっくりと立ち上がり、風に向かって言った。
「駅前に賭博場がある国に、明日は来ない」

その背中に、桜の蕾が静かに揺れていた。
やがて訪れる春の嵐を予感させながら。

２．「家族を壊したのは、あの台の音だった」パチンコに人生を奪われた者の声
夜の上野に、湿った風が吹いていた。
パチンコ太郎は、アジトの屋上でノートを手に、じっと画面を見つめていた。下では不忍池が静かに波打ち、遠くの交差点からは玉のぶつかる乾いた音が微かに聞こえてくる。春が来る気配すら、どこか薄暗かった。

「親父が死んだのは八十歳。その日も閉店までパチンコ屋にいた」
意見は重かった。
「最後まで中毒者だった。パチンコさえなければ、あの人は…俺の人生は…違っていたかもしれない」
「母はずっと泣いていた。葬式にも行かなかった。墓も知らない。パチンコが俺の家族を焼き尽くした」

太郎はページをスクロールした。言葉の連なりが、どれも鋭い刃物のようだった。
「駅前の一等地に賭場がある。恥だ。世界で日本だけだ」
「ギャンブル脳のまま年金を溶かす高齢者。人生を棒に振る若者。なぜここまで放置された？」
「本人確認もせずに換金。古物営業法違反。それでも誰も止めない。警察が仲間だからだ」

深く、冷たい夜気が、パチンコ太郎の頬をなぶる。風が吹くたび、肩にかけたジャケットの裾がはためいた。画面には、さらに過酷な声が続いていた。
「中小のホールが潰れ、大手に中毒者が集まり、満席だ。依存症しか残っていない」
「特殊景品を廃止しろ。お菓子に戻せ。換金がすべてを腐らせた」
「パチンコがなければ、あいつは死なずに済んだ。俺は家族を守れた」

太郎は目を閉じた。彼の瞳の奥に、過去の映像が蘇る。
台を叩く手、財布の中身を空にする中年男、泣きながら帰る子供。
あのとき、何度も助けを求める目を見た。だが誰も、手を差し伸べなかった。

「あと、もう少しだ」
彼はぽつりと呟いた。
誰に言うでもなく。誰にも届かぬように。

春の空気のなかで、遠くから警備員のホイッスルが鳴った。
パチンコ太郎は、静かにノートを閉じた。
そのとき、空から一輪だけ早咲きの花びらが落ちてきた。
彼はそれを掴もうとはしなかった。
手を差し出しても、もう何も戻らないと知っていたからだ。

そして彼は、沈黙の街へ再び歩き出した。
まるで、救いのない夜へと身を沈める亡霊のように。

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