諸葛亮曰く、環境問題は大きな理念を掲げるだけでは人を動かせない。今夜取り上げるのは、10月1日から7日まで行われている「サーキュラーエコノミーアクションWeek」である。経済産業省と企業が連携し、循環経済を「買う・使う・分ける・まわす」という四つの日常行動へ落とし込もうとしている。10月3日と4日には横浜・みなとみらいで体験企画も実施される。孔明が見るべきだと考えるのは、環境政策が新しくなったことだけではない。「捨てない社会」を作る方法が、我慢や節約から、商品やサービスの選び方そのものへ移り始めている点である。

今夜の一題

サーキュラーエコノミーとは、製品や資源を使って捨てる一方向の流れから離れ、できるだけ長く使い、再利用し、再資源化して循環させる考え方である。今回の取り組みは、毎年10月の3R推進月間とも連動しながら、従来のリデュース、リユース、リサイクルをさらに日常の消費行動へ広げようとしている。

掲げられた行動は「買う・使う・分ける・まわす」の四つである。この表現は単純だが、意味する範囲は広い。再生材を使った商品を選ぶことは「買う」に入り、物を長く使うことは「使う」、資源として戻せるよう正しく分別することは「分ける」、不要になった物を中古流通や回収へ渡すことは「まわす」に当たる。

今回の特徴は、行政の啓発だけで終わらず、企業側が実際の商売の中へ循環を組み込んでいることである。衣服のレンタル、家具や家電の循環利用、ペットボトルの回収と再生、店頭回収など、方法は業種によって異なる。所有して最後に廃棄することだけが商品の一生ではなく、返却、修理、再販売、再資源化まで含めて一つの流れとして設計する動きが広がっている。

10月3日と4日には、横浜のみなとみらいで循環経済を体験できる催しも設定された。資源の分別などの行動と体験を結びつけ、制度を説明書で理解させるのではなく、実際に動いて覚えてもらう構成である。循環経済という硬い言葉を、買い物や外出の延長へ持ち込もうとしているわけだ。

なぜ、こうなったのか

これまでの環境対策では、「ごみを減らす」「分別する」「再利用する」という消費後の行動が前面に出やすかった。だが、物を大量に作り、大量に使い、最後だけ丁寧に分別しても、資源消費そのものを循環型へ変えるには限界がある。

そこで焦点が製品の入口から出口までへ広がった。壊れにくくする、修理しやすくする、回収しやすくする、別の利用者へ渡す、材料へ戻す。こうした流れを最初から設計できれば、廃棄物になった後だけを処理するより、資源を長く経済の中へ残せる。

ここで企業の役割も変わる。従来なら商品を一度販売すれば取引は一区切りだった。しかしレンタルや再販売、回収を前提にすると、企業は商品を売った後の状態まで考えなければならない。丈夫さ、修理のしやすさ、回収経路、中古価値までが事業設計の一部になる。

消費者側にも変化が起きる。「新品を所有すること」が常に最善とは限らなくなるからだ。一定期間だけ使いたい家具なら借りる選択がある。まだ使える衣服なら次の人へ回せる。飲み終えた容器も、正しく回収されれば再び材料になる。節約と環境配慮が別々の行動ではなく、同じ選択の中で重なる場面が増えていく。

この構造なら、環境対策を善意だけに依存させずに済む。利用者にとって便利、安い、手間が少ないという利益があり、企業にも回収品や再利用品から事業上の利益が生まれるなら、循環は一時的な運動ではなく経済活動として続きやすくなる。

孔明はここを見る

孔明は、循環経済の成否を決めるのは「環境に良いか」だけではなく、「普通に選んでも循環する仕組みになっているか」だと見る。

人は毎日の買い物で、すべての商品について資源循環を調べるわけではない。価格、品質、使いやすさ、近さ、手間などを比べて選ぶ。その結果として環境負荷の小さい行動になるなら強いが、毎回特別な努力を要求する仕組みなら長続きしにくい。

これは兵站にも似ている。優れた作戦でも、兵一人一人が毎日複雑な判断をしなければ維持できない軍は弱い。強い仕組みとは、普通に動けば必要な物資が届き、使い終えた物が回収され、次の用途へ移るものである。循環経済も同じで、善意ある人だけが特別な行動をする段階から、誰でも自然に循環へ参加できる段階へ進めるかが分岐点になる。

その意味で「買う・使う・分ける・まわす」という四つへの単純化には意味がある。循環経済という言葉を知らなくても、長く使う、返却する、分別する、中古品を選ぶといった行動なら理解できるからだ。

さらに企業側が回収や再利用を競争力へ変え始めれば、状況は一段変わる。修理しやすい製品、再販売価値の高い製品、回収しやすい包装、再生材を使いやすい設計が、単なる環境対策ではなく商品価値になる。循環が企業の負担であるうちは速度に限界があるが、循環そのものが利益を生むなら拡大する理由が生まれるのである。

最後に、策を一つ授ける

最後に、策を一つ授ける。明日何か一つ買う前に、「これは捨てる時、どこへ行く物か」を十秒だけ考えてみることである。

買わないと決める必要はない。高価な環境配慮商品へ替える必要もない。修理できるのか、売れるのか、返却できるのか、資源として分けられるのか。その出口を一度だけ確認してから買う。

この十秒を入れると、値札だけでは見えなかった商品の寿命が見えてくる。長く使える物なら多少高くても結果的に安い場合があり、短期間しか使わない物なら借りる方が合理的な場合もある。循環経済とは巨大な政策用語に見えるが、入口は意外に小さい。物を手に取った瞬間に、その物の最後まで一度想像する。それだけで「買って、使って、捨てる」という一直線の消費から一歩外へ出られるのである。