女性有権者を対象にした「史上最低だと思う首相」のランキングで小泉純一郎元首相が1位になったとの記事を受け、過去の構造改革を現在の雇用や所得環境と結び付けて評価する議論が起きている。小泉政権は当時高い人気を集めた一方、20年以上たった今は政策の長期的な影響を厳しく見る声も強い。

派遣・非正規雇用をめぐる責任論

批判側で中心になっているのは、労働市場改革と非正規雇用の拡大である。「人材派遣の拡大が長期的に日本を弱くした」「非正規雇用の増加による弊害が今になって表れている」と、現在の賃金停滞や将来不安の起点の一つとして小泉政権を挙げる声がある。

当時は規制改革によって働き方の選択肢が増えるとの期待もあったが、結果として低賃金・不安定雇用の層を厚くしたのではないかという評価だ。「政策は間違いだったと認めなければ改善できない」と、現在の制度見直しへつなげるべきだとの意見も出ている。

「一人の首相だけに帰すのは単純すぎる」

一方で、歴代首相の順位そのものに異論も多い。「もっと悪かったと思う首相がいる」「経済停滞を一人の政策だけで説明するのは無理がある」といった反応だ。政権交代、金融危機、人口減少、企業行動など長期間にわたる要因を考えれば、小泉氏だけを原因とする評価は単純化しすぎるという考えである。

また、小泉政権時代に行われた改革のすべてを同じ評価にまとめることへの疑問もある。郵政民営化、規制改革、外交など政策分野ごとに効果と副作用を分けるべきで、「好き嫌いのランキング」と政策検証は別物だという指摘だ。

人気の高かった政権ほど後年の評価が揺れる

興味深いのは、小泉氏が在任中には強い支持を得ていた点である。「自民党をぶっ壊す」という強烈なメッセージと発信力は政治への関心を集めたが、当時支持した人から「今になって結果を見ると評価が変わった」とする声が出ている。

政治家の評価は在任中の景気や印象だけでなく、制度変更の影響が10年、20年後にどう現れたかでも変わる。特に雇用制度のように企業と家計へ長く影響する政策は、短期の人気と長期の評価が一致しないことがある。

今回の議論で重要なのは、誰を「最悪」と呼ぶかより、どの政策が現在の問題につながり、どこを修正すべきかを具体化することだろう。歴代政権への感情的な順位付けだけでは、賃金や雇用の課題は解決しない。