Google日本法人で10年以上勤務したソフトウェアエンジニアが、PIP(業務改善プログラム)を経て解雇されたことを巡り、解雇無効などを求めて東京地裁に提訴した。報道では、元社員は2014年に入社してL3からL5へ昇格し、解雇時の年収は1470万円。2025年9月の面談では「堅実で信頼できるチームメイト」「成長軌道に乗っている」と評価された一方、翌月にPIP対象となり、「L5レベルのリーダーシップ」などの目標達成を求められたとされる。原告側は評価やPIPの運用が不当だったと主張している。

反応で最も多いのは、「外資系では突然の人員整理や厳しい評価は珍しくない」という見方だ。高い給与は雇用の安定性と引き換えであり、成果が足りなければ入れ替えが起きるというイメージを持つ人は多い。「Googleに10年以上いたなら転職先は見つかるのでは」「L5まで上がったなら次の会社へ移る時期だったのでは」と、転職市場を前提に考える声も強い。

しかし、それに対して「外資だから何をしても許されるわけではない」という反論がはっきり出ている。日本国内で結んだ雇用契約なら、日本の労働法が適用されるのが基本であり、アメリカ本社の感覚だけで即時解雇できるわけではないという指摘だ。特に、高評価の直後に抽象的な目標を課すPIPへ移行した経緯が事実なら、会社側が解雇に向けて評価を組み立てたのではないかと疑う声がある。

一方、報道を細かく読んだ人からは、元社員側にも会社とのミスマッチがあったのではないかという見方が出た。L5がリーダーシップを求められる職位であるなら、「堅実なチームメイト」という評価は必ずしも職位期待を満たしたという意味ではない、という読み方だ。また、会社側から退職パッケージが提示され、その後に別分野の業務を含む課題が設定された経緯を見て、「完全な突然解雇という単純な話ではない」とする反応もある。

議論が割れる最大の理由は、PIPそのものへの印象が正反対だからだ。本来は業績改善のための制度だが、実際には退職勧奨や人員整理の前段階として使われることがある、という経験談が相次ぐ。外資勤務経験者からは「上司個人の裁量が大きい」「達成困難な目標を設定されれば評価はどうにでも作れる」という警戒がある一方、「役割期待が明確な会社では達成できなければ交代するのは当然」という意見もある。

さらに、生成AIの普及でエンジニアの役割そのものが変わっているという論点も加わった。単にコードを書く能力ではなく、設計、判断、チームを率いる力の比重が増すなら、過去に高評価だった人でも将来の役割期待と合わなくなることはあり得る。ただし、それと法的に有効な解雇かどうかは別問題である。

この件は「高給外資は厳しい」という一言では終わらない。会社が求める職位要件、PIPの公平性、日本の解雇規制、在留資格を含む転職事情が絡む。反応全体を見ると、元社員を全面的に擁護する空気でも会社を全面的に支持する空気でもなく、「外資の厳しさは理解するが、評価手続きが公正だったかは裁判で確認すべきだ」という見方に収れんしている。

コメントでは年収1470万円という数字自体にも大きな反応が集まった。「十分に高給だからリスクも受け入れるべき」という声がある一方、「GoogleのL5としては思ったほど高くないのでは」という見方もあり、同じ数字でも受け止めは真逆だ。日本の平均的な給与水準から見れば非常に高いが、世界的テック企業の高度人材市場では比較対象が違う。

元社員が外国籍であることから在留資格の問題に話題が流れる場面もあったが、そこは法的論点と感情論を分ける必要がある。就労資格は転職や退職後の手続きに影響するが、国籍によって解雇の有効性の基準が変わるわけではない。個人属性への批判が強くなるほど、本来確認すべき評価制度や退職勧奨の手続きが見えにくくなる。

また、日系企業との比較では「日本企業は簡単に解雇できないから安心」という評価と、「その代わり能力差が給与に反映されにくく、動かない人材を抱える」という批判が対になっている。外資型の高報酬・高流動性と、日本型の安定雇用のどちらが正しいかではなく、働く側がどのリスクを取るかという選択の問題になっている。

結論が出るまで会社側と原告側の主張には未確定部分が多い。だからこそ、ネット上の印象だけで「能力不足だった」「不当解雇だった」と決めつけない姿勢が必要だ。注目すべきは、評価が短期間でなぜ変わったのか、PIPの目標は測定可能だったのか、別業務への配置や退職パッケージの提示がどのような位置づけだったのかという具体的な事実である。